上記Q11に示すリサイクルは、主に、イオン積が最大となる低温領域で利用されますが、分解する場合には、温度を更に上げて、ラジカル反応領域が利用されます。
高圧熱水中に酸素ガスを共存させて、有害物質を無害化する 超臨界水酸化分解法と、酸素ガスを使用せずに、単に高温でのラジカル反応による軽質化、ガス化があります。
酸素ガスを使用する超臨界酸化分解法は、SuperCriticla Water Oxidation略して、SCWOは、水の臨界温度374℃以上で高密度の水蒸気ですから、酸素と完全に混ざり合い、油も気体となっています。 このため、低い温度で水と油、酸素の気泡が混ざり合わない状態よりも、高速度で反応が進みます。これを利用し、PCB、ダイオキシンなどの難分解性有機塩素化合物などをほぼ完全に分解する技術として利用され、韓国Namhae Chemical社は、 2002年に爆薬(DNT/MNT)製造工程の廃液2m³/Hr、COD 50,000ppm、T-N(全窒素(Total nitrogen) 20,000ppmを各々40ppm、60ppm減少させるプラントを稼働させました。
日本国内でも以下の稼働プラントが稼働しました。
- 下水汚泥(含水率>90%)処理 : 1.1 m³/Hr、27MPa、~600℃ @ 兵庫県神戸市内, 1999年パイロット稼働
- 半導体製造廃液処理: 25MPa、~600℃ @ 千葉県館山市内, 1998年稼働
→ TMAH、アンモニア、TOCに対し、分解率は、99.9%以上で、工場補給水として再使用可能。
軽質化・ガス化の例では、ポリプロピレン PP を超臨界水で30分処理した場合、分解率は 400℃で30%、415℃で70%、430℃で95%以上で、60分処理ではほぼ100%分解との報告があります。 この報告によると、PPは高温で溶融状態となり、溶融相中でポリマー主鎖がランダムな位置で熱分解を受け、ラジカル反応が開始されます。更にある分子サイズ以下の分解生成物は、超臨界水中に拡散溶解し、超臨界水相中でさらに主鎖切断、 水素引抜き、異性化、環化やラジカル同士の再結合などの反応が進み、オリゴマー程度まで分解が進んだ生成物は油相成分として残ります。PPの主鎖末端や側鎖が切断されたり、生成した油相成分が更に分解を受けるとガス成分が生成します。
超臨界水メタン発生プロセスとして、ナフサの主成分であるヘキサンを原料として、25MPa、380℃、加水比0.67で超臨界水反応を行うと、メタン CH₄ の回収率は、>78mol%が確認されました。