代表的な例を上記のQ4に示します。最も典型的な例は、染色です。
2012年2月に、スポーツフットウェアの世界的企業ナイキ社(米国NIKE, Inc.)が、“超臨界流体(二酸化炭素)”による無水染色技術を「アスリートと地球環境の両方に貢献する」ために業界全体に普及させて いきたいと発表しました。そして、2012年8月にアディダス社(ドイツADIDAS AG)がDryDyeと称し、同一技術で「世界の2年間の染色で地中海の海水相当量の水を消費。が、今夏50,000枚のTシャツをDryDyeで 染色1,250㌧の水を削減した!」と発表し、環境貢献への取組みを宣言しています。日本でも1990年代後半から超臨界CO₂染色技術の研究が福井大学を中心にして行われてきました。
超臨界CO₂が有機高分子材料に溶解すると、膨潤・可塑化(高分子鎖の絡み合いを緩和し運動性を促進、自由体積の増加)が起こります。例えば、ポリカーボネート(PC)は、一般に非晶性ポリマーと 考えられていますが、PCとCO₂のスピノーダル分解によるup-hill拡散がPCの結晶化を誘発すると考えらています。これらの特徴を利用して、従来染色が難しいと言われていたポリエステル繊維他の染色が 排水ゼロで実現でき、様々の分野で活用が検討されています。
ポリマー(樹脂)へのCO₂の影響
- Tgの低下
- 粘度の低下
- 表面張力の低下
- 拡散係数の増加
- 結晶化の促進