物質の溶解性は二酸化炭素の温度と密度が関係します。密度が低いと気体的性質となり、溶解度は低下します。つまり、圧力は高い方が良いことになります。ただし、大型の装置では、16MPaまでとそれ以上で、使用する配管等が異なりコストに大きく影響しますので、上限の16MPaで試験することもあります (試験機自体の耐圧性はそれ以上あります)。
温度については複雑です。通常、「密度」一定なら温度上昇とともに溶解度は上がります。一方「圧力」一定の場合、温度が上がると、密度が下がり、溶解度が下がることがあります。典型的な例を図で示します。多くの場合、圧力上昇による溶解度の増加の傾きが、高温で大きくなります。つまりどこかの圧力(10~30MPa)で、高温での溶解度が低温での溶解度を追い越す特性を示します。その圧力が16MPa付近の物質はよく見られます。
また、相溶に近いほど二酸化炭素とよく馴染む場合は、ある密度以上で急激に溶解度が上がります。すると臨界圧力より少し高い圧力程度で良いこともあります(その場合、超臨界ではなく液体二酸化炭素も選択肢に入ります)。
ただし、溶解度の他に拡散の効果も考える必要があります。生物材料の場合、材料をすりつぶすことが多いですが、それは物質の拡散を速くするためです。溶解度はあくまで平衡状態を表しますが、拡散は溶解の速度すなわち抽出時間に関係します。このため、拡散を速くするには温度を上げる方が有利に働きます。
弊社の試験例では、高温の方が良いケースと、低温の方が良いケースが混在しています。これは物質の化学的特性と、素材の構造的特性が複雑に絡み合った結果であると言えます。
上記の理由により、導入装置を16MPa以上にするか否か判断材料にする場合は別ですが、圧力を想定装置の最大に固定して、温度・サンプル種別・エントレーナーの有無を振ることを推奨しています。